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「リスナー」


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イラスト パレッタ

完成日 2009.2.13

 画材 ケント紙に水彩

サイズ 36.4×25.7cm


こちらもお気に入り。

前作の「ピアニスト」の連作です。


これは裏に来るイラストだった事もあって、晩年のベートーヴェンがテーマです。

耳が聞こえなくなる、という事がどんな事なのか、僕には分からないけれど、

絵を描く人間が失明するのを怖れるのと同じ「怖さ」であるような気がします。

それは、同時に「大切さ」故の怖さであって、

そうなった事でしか分からない強みも、きっと在るんだろうと思うんです。

聞こえないからこそ、今まで耳に入っていた雑音を聞かずに済むという事や、

もう音に追われなくて済むという、ささやかな安堵とか、

そういうものに気付けるのは、そうなった後なのだろうと。

無い物を羨ましく思うのは、代償にそういった体感を得られる事への

畏怖なのかも知れません。


何となくライオンの表情が緩んでいるのは、そういう気持ちがあったからです。

むしろ聞こえていた方が、苦しかったんじゃないかと思えていて。

聞こえない事は大変だったろうけれど、

決して、不幸では無かったんじゃないかなあ。


英文の直訳は、

「思い出しては 巡る曲」。