ひみつのあとがきよく見つけましたね。おめでとう。 佐原の個人的なコメントをどうぞ。 ネタバレもあるかも。 |
前作「スズのほし」がきらびやかな色使いだったので、 一転して、くすんだ、落ち着いた色合いを目指しました。 この頃、コンテを水で溶くと、くぐもった感じの色調になるのを発見し、 何かに使えないかと、実験的に溶き始めてみたものです。
僕にとってこの色は、日本的であると同時に、 とても西洋を感じる色調でした。 日本は湿気が多く、どうしても空気自体が曇りがちで、 それ故に、「水」を使った画材が強いと感じます。 一方、パステルは乾いた国の画材で、パサパサしていて、軽い。 日本を描くのに、乾いた画材を合わせるのはセンスがいる事だし、 どうしても「浮き」みたいなものを感じてしまって、まとまりにくい。 普段、強く意識はしないけれど、僕は日本人であると同時に、 「水」に恵まれた環境にいる。 それを活かしてみたいと思った結果、 「パステルを水で溶く」という方法に行き着いた訳です。 外国だと、水が貴重だから、油で溶いてしまうんですよね。 だから何となく、この絵達は、 「西洋の画材で、日本を描く」というニュアンスが近いかと思うのです。 M画用紙は、以前の画風でよく使っていて、余っていた事もあり、 今回のパステル水溶きに使ってみました。 へたらなくてイイ感じに塗れて、嬉しかったです。
全体のイメージは、「あやふやで不確かなもの」を描きたかったので、 名前も個性も曖昧な、第3者的な視点を貫きました。 キャラクター達に表情がないのもワザとだし、 瞳らしい瞳を描き入れていないのも、そういう理由からです。 1ページだけ、瞳を描いたページが在るのは、 あの地点を切り返しに、僕達が現実に帰る為の暗喩のつもりです。 一番描きたかったのは、スカートのレースが躍る場面でした。
「スズのほし」の文章が、「一般受け」を考えて組まれたものだとしたら、 「三日月の晩に」の文は、全くの地で書いた文だと言えるかと思います。 響きを重視しているので、文の切り方が妙なところも有るのですが、 それが僕の間合いなのだから、これはこれでいいと思っています。
長くなりました。 絵本というよりは、詩付きの絵に近いかも知れません。 夜の闇を味わうように、静かにページをめくってもらえたらと思います。thanks! |