ひみつのあとがきよく見つけましたね。おめでとう。 ちょっと長めのコメントです。 時間がある時にどうぞ。 |
約一年ぶりの絵本。 今の絵のスタンスがだいぶ身になってきたので、絵だけで直球勝負! という気持ちで描いたものです。 いろんな意味で、小細工をしてないですね。 ストライクの直球のみで、フォークもカーブも使わない、といった所でしょうか。
色もスタンダードに、いつものクサカベの水彩絵の具を使っています。 絵の具は普段通りとはいえ、 絵本は場面場面で色の切り替えが重要になるので、 普段は使わない色の取り合わせを試してみる事も多く、 かなり実験的な活動になったりもしています。 続き物だから、一気に描き上げないと気分が変わってしまい、 続いている感じが出なくなるのも、難しい所。 気力が必要だから、年に何冊も、という器用な事は、しにくいけれど、 1枚モノでは得られない感覚と色使いを、否応なく試す事になるので、 自分の絵を成長させるにはとてもいい試練なのです。 絵に教えられている感じ。 集中合宿みたいなものですね。
今回は、森のおどろおどろしい感じや、「和」に近い渋めの色を使いつつ、 茶色のバリエーションを多用してみました。 オレンジっぽい茶系の色は、何となくイタリアっぽくなればいいなあと思いながら塗っています。 メインで使っているKMKケント紙は、一般にも手に入りやすい、とても普遍的な紙です。 表面がつるつるしているので、以前はとても苦手な紙でしたが、 ヤスリで削るという荒技を使うようになってから、一番使用頻度の高い紙になりました。 コシが強くて丈夫なので、破れを気にせず、水でガンガン塗れる所も好きです。 削った後に水彩で塗るとランダムな線が現れ、 それが空気の霞のように見えるので、空間として完成されて行く気がして、 そういう所も好みなのです。
全体として、「時間の流れ」を描きたかったので、 取り立てて大きな事件が起こる訳でもなく、淡々と流れて行く感じです。 左右どちらからでも見れるように、 一貫して、コーチン(にわとり)は右方向に進み、 もぐりん(もぐら)は左方向に進んでいます。 なので、それぞれのキャラクターを追って、2巡して貰うのが、 この本のステキな見方かと思います。
描き上がってから思ったのは、「絵本じゃなくても良かったかも」ということ。 多分、絵巻物のように、長い一枚の紙にだあっと描いた方が、 効果も迫力も出たんじゃないかなあと思ったりしました。 でも、描いてみないと気付けないものなので、これはこれで良かったのだと思います。 製本は蛇腹式で、屏風のように広げられるので、もっと世界観が分かりやすいのですが。 絵本のいい所は、空間も巻き込んで3次元にできる所だからなあ。 ウェブでは紹介程度に留めさせてもらいましょう。
長くなりました。 いつも読んでくれてありがとう。 お茶でも飲みながら、ゆっくりご覧下さいマセ。 thanks! |